常温半年~
今回は、梅干しの作り方をご紹介します。
2015年は東京で初めての夏を迎えたこともあり、東京の自宅でいただくための梅干しを作りました。
単身赴任のワンルーム住まいなので、もちろん家もベランダも狭いのですが、昔ながらの丁寧な王道の作り方で、素晴らしい梅干しが出来上がりました。
長年作ってきた失敗&成功の経験や、狭いなりの工夫を交えてご説明いたします。時々写真が狭苦しいスペースになっていますので、ご容赦いただければと思います。
レシピについて
大まかな手順は、1)梅の下ごしらえ&下漬け(塩漬け)、2)本漬け(赤じそ漬け)、3)土用干し、の3段階です。
梅干し作りの期間は、黄色~赤色に完熟した柔らかい梅が出回りだす6月半ばから、梅雨が明けて晴天が続く7月下旬~8月上旬頃までです。
用意するものは、各手順ごとに記載します。
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1. 梅の下ごしらえ&下漬け(塩漬け)
黄色~赤色に完熟した柔らかい梅が出回り始めたら、梅干し作りのスタートです。
まずは、梅の下ごしらえと、下漬けを行います。
用意するもの
梅2kg分
- ■材料
- 完熟梅(2~3L) 2kg
- 粗塩 300g
- ホワイトリカー(35度) 50ml
- ■道具
- ホウロウ容器(7L) 1つ
- 押しぶた(直径18cm) 1枚
- 重石(2~2.5kg) 2個
- 紙袋(なければビニール袋) 1つ
- 洗い桶(なければ大きめ(5L程度)の鍋) 1つ
- 竹串 1本
- 大きめの盆ざる(直径30cm以上) 1~2枚
- 清潔なタオル 1~2枚
- 使い捨て手袋 1組
- 消毒用アルコール(またはホワイトリカー)&キッチンペーパー 適量
「用意するもの」について
上記の材料や道具類について、いくつか補足します。
完熟梅
種類は?
おすすめは、和歌山の「南高梅」です。
アク抜き(半日ほど水に漬ける)をしなくても良いこと、そして肉厚、また、種離れが良いので食べやすいためです。
なぜ完熟梅を使うの?青いものはダメなの?
私が若い頃に失敗した例も混じっており恐縮ですが、以下のような理由です。
- 「皮が薄く、柔らかく仕上がる」=食べやすく仕上がります。ちなみにカリカリ梅には小さい青梅が適しています。青梅で、うっかり「デカいカリカリ梅」を大量に作ってしまったことがあります。いや、まぁ、おいしかったですけどね……。コレジャナイ感が、すごかったです。
- 「梅酢が上がりやすいこと」=塩分控えめでも失敗しにくいです。
- 「流通している、黄色~赤色に完熟した柔らかい梅を使うこと」=青い部分が残る梅を室内で追熟させても、樹で熟したものとは違うこと、追熟の間にカビらせる恐れがあるためです。はい、うっかりほとんどカビさせたことがあります……。追熟させる場合は、包装のビニールを外し、新聞紙をひいた平ザルの上に梅が重ならないように広げ、冷暗所(冷蔵庫である必要はありません。涼しく日が当たらない場所)に置きましょう。熟したぶどうや、いちごのようにデリケートです。
自然落下した完熟梅が一番適している、と聞きます。その通りやと思います。また、熟して自然落下するので、ヘタもないらしいです。
せやけど超~~~高価なこと、かつ、天候により、そもそも入手できない年もあるため、一度も入手したことがありません。
粗塩
なぜ粗塩?
粗塩は、塩の粒が粗いので、実と一緒に漬け込んだ際に、下へ落ちにくいのです。
このおかげで、しっかりと梅の実それぞれへのフタの役割が出来るため、梅酢が上がりやすいのです。
私のお気に入り、赤穂の天塩です。以前、スーパーで特価していたのでたまたま購入し、おにぎりや焼き魚に使ってみると、後味で甘み・旨味があり、それ以来ファンになり、あらゆる料理に使っています。特に、味付けがシンプルな料理に使う際には、とても頼りになります。
粗塩の量はなぜ300g?
梅の量に対して15%(2kgなら2000g×0.15=300g、3kgなら3000g×0.15=450g)が、えぇ感じで仕上がる塩加減、つまり「いい塩梅」やと思います。
でも、「減塩にしたい」「そんなもんだと梅酢が上がらない」「塩吹くくらい塩辛いのが好き」という方は、13~20%くらいならお好みでえぇと思いますよ。実際、多く出回っているレシピは、18%くらい(2kgなら360g)が多いんやないでしょうか。
ホワイトリカー(35度)50ml
ホワイトリカー(35度)50ml? なにその中途半端な量? そもそも必要なの?
殺菌のために使います。
本来は、ホワイトリカーをスプレー容器に入れ、梅の実一つひとつに吹きかけて消毒するために使います。
私はそれが面倒なので、「これ、どばっと全体に掛けても、おんなじちゃうの?」→「仕上がり・品質に変化なし」やったため、ホワイトリカーを「どばっと50ml」使用しています。
使い残したホウイトリカーは、アルコール度数が高い蒸留酒ですので、保管状態さえ良ければ長期間経過しても、ほとんど中味に変化はありません。とはいえ、アルコールの揮発、臭いの吸着等がある、といわれていますので、早めに使うにこしたことはないです。私の経験則で恐縮ですが、開栓→3年後頃までに梅干しに使用または果実酒として漬ける、でおいしくいただけました。
ホワイトリカー、少しの量のために、わざわざあのデカいの買うの?
ホワイトリカーは、酒屋やスーパーに5~6月によく出回る、いわゆる写真のようなお酒ですが、それだけではないです。
ホワイトリカーとは、一般的には「さとうきび」から砂糖をとった後の搾りかすを原料に、蒸留機を使って、風味がなくなるまで何度も蒸留を繰り返して出来た無味無臭のアルコールを、蒸留水で薄めたものですので、ウオッカ、ジン、ホワイトラム、テキーラ(ラムとテキーラは樽熟させてないもの)が該当します。
ですので、殺菌に使用しますから、もし「家にウオッカやジンならあるんだが」という方は、充分に代用できますし、私も実際に使ったことがありますが、仕上がりに違いはありませんので、お使いになるのは問題ありません。
でも、単価が一番安価なのが、ホワイトリカーです。新たに購入するなら、ホワイトリカーがおすすめです。東京のコープみらいでは、ごく少量(うろ覚えでごめんなさい、200ml前後やったと思います。ワンカップサイズです。)のホワイトリカーが販売されています。これは、ものすごく、とてもかなり、素晴らしく良心的やと思います。
ホウロウ容器、押しぶた、重石
なぜホウロウ容器?なぜ7L?
梅干しは、酸と塩分を扱いますので、酸と塩分、そしてアルカリにも強く腐食しにくく、光を遮り、臭いが移りにくいホウロウ、もしくはガラス容器を使用します。ホウロウ容器の中にキズがある場合は、使うのを避けましょう。酸化して変質します。
一番経済的なのは、大量味付け海苔のガラス瓶なんですが、近年、海苔は瓶やなくてプラスチックになりましたね……。
下漬けの際、押しぶた&重石を乗せること、梅酢(白梅酢)をしっかり上げることから、かさが増えるため、容器は少し大きめです。
21cmサイズ(7L)で梅2~3kg相当、24cmサイズ(10L)で約5kgが目安です。初めての方や、1~2人暮らし、+小さいお子さんのご家庭で漬けやすい・食べやすいのは、2kgやと思います。
「押しぶた」って何? 必要なの?
下漬けの際、重石を乗せる前に、アルコールスプレーで消毒したものを乗せます。
重石の力がまんべんなく均等に梅の実に行き渡るため、梅の実を保護し、きれいに梅酢が上がります。
重石(2kg~2.5kg)×2個ってどういうこと? 4~5kg×1個じゃだめなの?
重石は、短時間でしっかり漬けて梅酢を上げる下漬けでは2~2.5kg×2個、長期間ゆっくり漬ける本漬けでは2~2.5kg×1個のみを使うため、ひとつずつを用意しておくのがベストです。
梅の実の重さ×2倍の重さが下漬け、梅の実と同じ重さが本漬け、これが重石の重さの目安です。きれいに梅酢が上がりますよ。
ペットボトルに水を入れて、しっかりと栓をしたものでも代用できないことはないです。ただ、漏れるなどの事故で失敗すると目も当てられませんで、その点は充分にご留意くださいませ。
作り方
step
1梅の下ごしらえをします。洗い桶、または大きめの鍋に、たっぷりの水を入れ、梅を静かに入れます。
step
2実を傷つけないように、梅のヘタを取ります。
写真では片手でアクロバティックなことになっていますが、撮影の都合ですので、両手で行いましょう。
step
3やさしくこすり洗いをして、梅の表面の産毛を取ります。
こちらの写真も片手ですが、両手でやさしく包むように洗います。決してゴシゴシ洗わないようにしましょう。
step
4ざるにあけて、水気をよく切ります。
step
5さらに、清潔なタオルで、梅の水気を丁寧にふき取ります。水気はカビの原因になりますので、しっかりとふき取りましょう。
step
6粗塩の分量を量っておきます。
step
7ホウロウ容器の内側を、アルコールで消毒します。
アルコール消毒は、ホワイトリカーをスプレー容器に入れて吹き付けて使っても構いません。
step
8梅を漬け込んでいきます。ここからは、使い捨て手袋を手にはめて、梅を扱いましょう。
step
9だいたいで構いませんので、粗塩の1/3量を入れ、その上に梅の1/2量を置いて、
step
10粗塩の1/3量、梅の1/2量、残りの粗塩を乗せて、その上からホワイトリカーを全体に回しかけます。
step
11ホウロウ容器を上下にゆすって、梅全体に粗塩をできるだけまんべんなく行き渡らせます。
写真は全然行き渡ってないですが、まぁ、だいたいでOKです。
それよりも大切なのは、手でわしわし混ぜるのは絶対にやめましょう。梅の実に傷が付いてしまいます。梅干しを作る工程の「梅に傷」は、カビの元=失敗の元です。
ですので、容器をゆすって、粗塩を全体に行き渡らせます。そして、梅を平らにならしていきましょう。
step
12ホウロウ容器を上下にゆすって、梅が平らになったら、アルコールで消毒した押しぶたを乗せて、
step
133~5日ほど保存できる場所へ静かに運び、静かに置きます。重石を2つとも上からのせます。
重石は、いずれもアルコールで消毒しておきましょう。
step
14紙袋、またはビニール袋をかぶせます。朝晩1日2回、紙袋、重石、押しぶたを外し、容器を上下にゆすります。
step
153~5日経つと、漬け汁(白梅酢)が、梅の実ひたひたの量(漬け汁から梅の実が少し頭を出す程度)に上がります。これで、下漬けは完了です。
2. 本漬け(赤じそ漬け)
漬け汁(白梅酢)が上がったら、赤じそを加えて、本漬けをします。
赤じそのアクを出し、下漬けした梅に加えて本漬けをします。
約1か月間、梅雨明けまでじっくりと漬け込みますので、2~3日に1回は確認するようにしましょう。
用意するもの
梅2kg分
- ■材料
- 赤じそ 1束(葉だけを使います。正味約200g)
- 粗塩 大さじ2
- ■道具
- 大きめのボウル(直径23cm以上) 1個
- ざる(直径23cm以上) 1枚
- 平皿(直径20cm程度) 1枚
- 重石(2~2.5kg) 1個
- 菜箸 1膳
- 使い捨て手袋 1組
- 消毒用アルコール(またはホワイトリカー)&キッチンペーパー 適量
「用意するもの」について
上記の材料や道具類について、いくつか補足します。
赤じそ
どんなものを使うのが良いの?
葉の表・裏面とも赤いものを選びましょう。
葉のギザギザが少なく、裏面が緑色のものは不向きです。
茎付きの場合、写真のように、約90cm幅ほどの板の間が埋まってしまうほどのカサがあります。
作り方
step
1赤じその葉を指でつまむようにして、1枚ずつ、摘み取っていきます。
step
2摘み取った葉は、ボウルにたっぷりの水を入れた中に漬け、水を2~3回替えて、軽く押すようにして、ふり洗いをします。
step
3ざるにあけて、水気を切ります。
step
4ボウルに、水気を切った赤じそ、塩大さじ1を入れます。
step
5使い捨て手袋をはめた両手で、揉んだり、押さえつけながら、しっかりとアクを出します。このとき、赤じそがちぎれないようにしましょう。
step
6ぎゅっと絞って、泡だらけの濃い紫~黒色の、アクの水分を捨てます。
step
7アクの水分を捨てたら、一度ボウルを洗い、赤じそ、塩大さじ1を入れます。
step
8赤じそをほぐしながら、押すように全体を揉んで、さらにアクを出します。
アクは、1回目より泡が少なめ、鮮やかな紫色になっていきます。
step
9「これ以上無理、もう絞れない」というくらい、全力で絞ります。これで、アク出しは完了です。
step
10下漬けした梅の上に、アク出しした赤じそをのせます。
step
11赤じそで表面全体を覆うように、菜箸で全体に広げましょう。
step
12梅雨明けまで保存できる場所へ静かに運び、静かに置きます。そして、アルコールで消毒した平皿をのせて、
step
13再びアルコール消毒をした重石を1つのせて、
step
14中ぶたをして、
step
15容器のふたをして、約1か月ほど、梅雨明けまで保存します。
step
16長期間の保存ですので、念のため2~3日に1度、中身の様子を見てみましょう。万一、カビが生えていたら、スプーンなどですくい取り、捨てましょう。
もし、うっすらと表面が白くなっていたら、それはカビです。しっかりと取り除き、焼酎を霧吹きで全体にふりかけましょう。
3. 土用干し
梅雨がすっかり明けて、かんかん照りの晴天が3日間以上続くような気候になったら、土用干しをしましょう。
土用干しはなぜするの?意味あるの?
土用干しの目的は、次のようなものがあります。主に、保存性を高めること、柔らかく、色鮮やかに、風味豊かにまろやかに仕上げる役目を持っています。
・太陽光で殺菌する
・余分な水分を蒸発させる
・皮や果実を柔らかく仕上げる
・色を濃く鮮やかにする
・風味豊かなまろやかな味にする
ただ、例えば「ベランダ狭すぎ!日が当たらない!」「排気ガスまみれのベランダなので、梅を干すとか絶対無理!」という環境の場合は、土用干しをせず、「2. 本漬け(赤じそ漬け)」のまま、梅酢に漬けて保存しても構いません。その場合、2~3年以内を目標に食べ切るとよいです。
用意するもの
梅2kg分 |
---|
■道具 |
盆ざる(直径30cm) 3枚 |
(ベランダが狭い場合)ドライネット 1つ |
菜箸 1膳 |
へら または しゃもじ 1つ |
約2Lの保存容器 1個 |
消毒用アルコール(またはホワイトリカー)&キッチンペーパー 適量 |
「用意するもの」について
上記の材料や道具類について、いくつか補足します。
盆ざる(直径30cm)×3枚
おうちが広い場合は、直径50~60cm程度のざるが1枚あればOKです。
私の家のように、「そんな大きなサイズを広げる・しまう場所がない」という場合は、直径30cmの盆ざるを3枚用意しましょう。
次項でご紹介するハンギングドライネットと組み合わせて、梅干し2kgをちょうど干すことが出来ます。
盆ざるは持っておくと、野菜をゆでて冷ましたり水気を切ったりする際や、おもてなし用のざるそばやそうめんを盛ったりと、調理でも食卓でも大活躍しますよ。
ドライネット
おうちが広い場合は、必要ありません。
前項でご紹介した直径30cmの盆ざるが、ちょうど3枚入ります。
この、盆ざる+ドライネットの組み合わせは、梅干し以外でも、大根やにんじんなどの干し野菜を作ったりと、大活躍しています。
約2Lの保存容器
漬け込みの際に使用したホウロウ容器のまま保存しても良いのですが、長期間保存となると、かなり大きいですので、場所を取ることから、出来上がった梅干しは、2L程度のコンパクトな容器に入れ替えると良いです。
材質は、ホウロウかガラスが最適です。一番経済的なのは、インスタントコーヒーの空き瓶です。でも、インスタントコーヒーを飲まないご家庭は、ホウロウかガラス、かめなどのコンパクトな容器を用意しておくと良いです。
作り方
1 | 梅雨が明けて、晴天が3日以上続くようになったら、土用干しをします。 本漬けをしてから1か月ほど経っていますので、梅はすっかりと鮮やかな赤色に染まっています。 |
2 | アルコールで消毒した盆ざるの上に、梅を1粒ずつ並べていきます。 あとで、赤じそを置きますので、中央は空けておきます。 写真では、菜箸を使っていますが、手にビニール手袋をはめて、手で作業しても良いですよ。 |
3 | 全部並べると、このようになります。 |
4 | 中央に赤じそを置いて、へらで赤じそを押すようにして、梅酢をよく切りましょう。 写真では、へらを使っていますが、手にビニール手袋をはめて、手でぎゅっと絞っても良いですよ。 また、赤じそは、厳密に全部すくい取らなくても良いですよ。梅酢の中に少し残った状態でも構いません。 |
5 | ドアノブなど、低めの安定したところにドライネットをつるして、盆ざるを静かに並べます。 |
6 | ファスナーを閉めます。 |
7 | ベランダに3日間干します。その際、次のことを守りましょう。 |
8 | ・途中で梅の上下を返しましょう。 ・盆ざるの上中下の位置を、1日ずつ入れ替えましょう。 ・カビの元となりますので、雨に濡らさないようにしましょう。 もし夕立やゲリラ豪雨など、雨に遭ったら、次のように対応しましょう。 梅がしわしわになって乾いたら、土用干しの完了です。 |
9 | 土用干しの最終日には、梅酢を容器ごと天日干しにします。 |
10 | 保存容器をアルコールで消毒します。 |
11 | 消毒は、容器の中だけでなく、ふたもしっかりと消毒しましょう。 |
12 | 土用干しをした梅、赤じそを保存容器に入れて、 |
13 | 梅酢を注ぎ、しっかりと密封し、冷暗所に保存します。 この時点でもいただけますが、半年ほど経つと、味がなじんでまろやかになり、さらに美味しくいただけます。 |
14 | 2~3年間は、味がさらにまろやかになっていき、色合いも変わらず、とても深みのある味わいと香りで、美味しくいただけますよ。って、昨年漬けた梅干しが、もうあんまりあれへんですね……(ノ∀`) |
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