冷蔵4日
今回は、ローストビーフのレシピをご紹介します。
後半で、肉の色や肉汁についてもご説明いたします。
私のレシピは、フライパンを使い、焼いたかたまり肉を、野菜とワインで作ったソースで煮るように焼きます。
ですので、生焼けの心配は無く、焼き過ぎることもなく、ソースの味と風味がしっかりと染み込みますよ。
ねかせるほど美味しくなりますので、前日に作っておけば、肉の中で肉汁とソースの旨味がしっかり回り込み、とても立派な、おもてなし料理になります。
連休のおうちごはんや、大切な方のお誕生日、クリスマス、お正月などのハレの日に、ぜひ、ご活用くださいませ。
レシピについて
ポイントは、1)牛肉を室温に戻し、2)表面を焼いて、3)ソースで煮込んで、4)余熱調理です。
ローストビーフのレシピのご紹介と、牛肉の色、温度、肉汁について、それぞれご説明いたします。
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材料
4人分
- 牛もも肉かたまり 400~500g
- ■牛肉の下ごしらえ用
- 塩 小さじ1
- こしょう 小さじ1
- ■油
- オリーブオイル 大さじ1
- ■ソース
- にんにく 1片
- セロリ 5cm(10~15g)
- 玉ねぎ 1/4個
- 赤ワイン(白ワイン、日本酒でもOK) 50ml
- 水 150ml
- ブイヨンスープの素(コンソメスープの素でもOK) 小さじ1/2
- しょうゆ 大さじ1
作り方
手順が多いように見えますが、おおまかには、1)牛肉を室温に戻し、2)表面を焼いて、3)ソースで煮込んで、4)余熱調理、で完了です。
それぞれの手順を、少し詳しくご紹介します。
step
0牛肉は、室温20度前後の場合、調理開始の2~3時間前ほど前に冷蔵庫から出して、肉の芯まで温度を常温に戻しておきましょう。
冬場でキッチンが寒く10度以下の場合は、20度以上の暖かい部屋に置いて戻すことをおすすめします。
肉の芯が冷たいまま調理を始めると、表面は焼けているように見えても、中まで火が通らないためです。もし、1kg以上のかたまり肉を使われる場合は、前日から出しておくと良いでしょう。
私は、ローストビーフを作る時は、牛肉を買ってきたら冷蔵庫に入れず、常温に置いたまま、もう1件買い出しをしたり、掃除をしたり、出しっぱなしで別メニューの食事を用意していただいて片付けたりと、放置プレイです。これで、ちょうど良いくらいになります。
とにかく、牛肉は室温に放置しておいて……
step
1まず、ソースに使う、にんにく、セロリ、たまねぎを、2mm厚さ程度の薄切りにします。
後の手順でソースをこしますが、みじん切りより、薄切りのほうが、雑味が出にくいです。薄切りでも、煮込みますので、香りがソースにしっかりと移ります。
これらは、後で使いますので、横に置いておきましょう。
step
2牛肉に、塩とこしょうを、全体的にまんべんなく、よくすりこみます。
ザラザラがなくなるまで(なくなりませんが)、それくらいの気持ちで、表面はもちろん、側面や角にも、しっかりとすりこみましょう。雑にすりこむと、こしょうが多く付いた箇所がロシアンルーレットのように激辛になってしまいます。
塩は、肉の旨味を閉じ込める働きがあります。肉の重量の1%がちょうど良いですので、4~5gがベストです。こぼれることも想定して6g=小さじ1を使用します。
こしょうが、とても多めの配分に思えるかもしれませんが、肉の臭みがしっかりと消えて、仕上がりは、ちょうど良い塩梅になります。しっかりと広げるようにすりこみましょう。
step
3厚手のフライパンを中火にかけ、1分ほど空焼きします。
中火は、写真のように、炎の先がフライパンの底にちょうど当たって、炎が折れ曲がらない程度です。
煙が出るまで加熱しなくても、「1分ほど空焼き」で構いません。特に、あまり厚手でないフライパンや、慣れていないフライパンを使う場合は、牛肉が張り付いてしまうことがあるためです。
step
4フライパンにオリーブオイルを入れて、さっと全体に延ばします。
フライパンを持ち上げて回しても良いですし、キッチンペーパーを菜箸やトングでつかみながら、全体に延ばしても構いません。IHはフライパンを離すと加熱が止まる機種もありますから、手早く安全に出来るなら、どちらでも構いません。
フライパンを、ある程度温めてから油を入れるのは、少しでも油の酸化が少なくなるため、また、フライパンの余分な水分を飛ばすためです。油が温まった際の「ぱちぱち」としたハネがなくなり、また、雑味が減ります。
step
5牛肉を入れて、まず側面を焼きます。
側面を焼くのです。「各面焼こう」とすると、焼いたつもりでも、意外と側面が焼けていないのです。
側面にしっかりと焼き色を付けることで、たこ糸を巻かなくても、ぺったんこではなく、きれいな厚めの形を保った仕上がりになります。
step
6側面にあたる部分から、各面2分ずつ、すべての面を焼きましょう。
焼いている間は、動かさず放置して、じっくりと焼き付けましょう。上から押さえたりする必要もありません。
ひっくり返す際、写真では菜箸を使っていますが、ちょっとしんどいです。あればぜひトングを使いましょう。
step
7各面に焼き色が付いたら、火を止め、牛肉をお皿に置いておきます。
お皿は食器棚から出した冷たいもので構いません。また、後でお皿を洗うのが面倒であれば、アルミホイルを敷いた上に置いても構いません。
この時点では、肝心の牛肉の表面に赤みが残っていますが、後の手順でソースと一緒に煮るように加熱しますので、問題ありません。
フライパンは洗わず、これから肉汁を活かしてソースを作ります。
step
8牛肉を取り出したフライパンに、手順1の薄切り野菜を加え、弱火にかけ、2~3分ほど炒めます。
弱火は、コンロとフライパンの半分くらいの間に炎の先がある程度です。
野菜を焦がさないように、しんなりとするまで、2~3分ほど炒めましょう。
step
9赤ワイン、水、ブイヨンスープの素、しょうゆを入れ、中火にします。中火にし、しばらくして勢いよく全体が沸騰したら、手順7の牛肉を加え、表面5分、ひっくり返して裏面5分ほど、焼くような気持ちで、ふたはせず、合計10分ほど煮ます。
「ローストビーフなのに、こんなに煮込んで大丈夫?」「生煮えがこわいので、8時間室温に戻したけど、この作り方だと中身まで煮えるのでは?」
大丈夫です。ローストビーフ用の分厚い肉は、しっかり室温に戻していても、焼き色をしっかり付けた後、さらに、10分程度浅いかさの煮汁で煮ただけでは、「じんわりと中までゆっくりと加熱されている」だけです。
step
10火を止め、牛肉を取り出して、アルミホイルで包みます。
こうすることにより、牛肉に余熱が回り、肉汁と旨味をしっかりと閉じ込めます。
アルミホイルは、三重に包むことをおすすめします。1)1回包んだら、2)反対側から包み、3)さらにその反対側から包みます。
保温が利き、肉汁が漏れにくくなります。
ここからソースを仕上げますが、牛肉は、この状態で室温で最低30分置きましょう。冬場なら、さらに布巾やタオルで包み、しっかりと保温します。これが、余熱調理になり、肉汁が牛肉全体に周り、美味しく仕上がります。その間にソースを作ります。
翌日以降に召し上がるなど、30分以上置く場合は、粗熱が取れてから、さらにジップロックなどの保存袋に入れて、冷蔵庫で保存しましょう。肉汁が漏れることなく、4日間ほど保存することが出来ます。例えば、大晦日に作れば、三が日の間は、余裕で美味しくいただけます。
step
11ソースの野菜を、ざるでこします。
もし、煮詰まりすぎて水分が足りないようなら、水を45ml~50ml前後(大さじ3前後)ほど加えて、混ぜ合わせながら再度沸騰させてから、こしましょう。
写真の都合上、ざっとこしているように見えますが、こした上から、ヘラを使って、クタクタになった野菜を押して、なで付けるようにして、こしましょう。
step
12こした汁をフライパンに戻し、フライパンを弱火にかけます。
せっかくの牛肉と野菜の旨味が詰まったソースです。焦げないように加熱しましょう。
step
13弱火のまま、ヘラでかき混ぜながら、1~2分ほど熱して、ふつふつと全体が煮立ったら、ソースの出来上がりです。
step
14翌日以降に召し上がるなど、すぐにいただかない場合は、ソースは牛肉と別で保存しましょう。
ソースは、粗熱が取れてから、よく消毒した保存容器に入れて、保存しましょう。
step
15いただく際は、手順10での、牛肉をアルミホイルにくるんで余熱調理30分以上の後、さらに、ある程度、粗熱が取れてから切りましょう。
余熱調理で、肉汁が全体に周り、美味しく仕上がります。また、熱い状態のうちに切ろうとすると、肉汁がかなり余分に流れ出てしまったり、うまく切れなくズタズタになったりと、かなり残念なことになってしまいます。
切る方向は、牛肉の繊維に対して直角です。
お店のような、ごく薄切りでももろちん良いですが、おうちローストビーフならではの5mm~1cm幅くらいの厚切りでも、とても贅沢に美味しいですよ。
年に一度のハレの日、おせち料理のお重には、はみ出すくらいの勢いで、贅沢にオリャーと盛り付けるといいですね。
切ったローストビーフにソースを全体にかけて、クレソンを添えて、いただきます。
ローストビーフには、ぜひ、クレソンを添えてみてくださいませ。クレソンと牛肉を一緒にお口に含んだマリアージュは、この上なく素晴らしく、ものすごく美味しさが引き立ちます!!
牛肉の色、温度、肉汁について
ローストビーフを切ると、薄い桜色の断面が、
数分経つと、鮮やかな紅色に変わり、肉汁が出ます。
レシピ通りに作ったはずなのに、牛肉を切ったら赤い肉汁がたくさん出る……。この色は生焼けじゃないの?肉汁は血?食べて大丈夫なの?についてです。
回答は
「食べて大丈夫です。肉汁は血ではありません。」
……なのですが
でも、それだけですと、一体何が大丈夫なのかがわかりませんよね。
ですので、「温度」「赤色」「肉汁」それぞれの面から、順を追ってご説明いたします。
焼き加減と温度
このローストビーフのレシピは、1)牛肉を室温に戻し、2)表面を焼いて、3)ソースで煮込んで、4)余熱調理、としています。
このようにして、厚いかたまり肉の中心には、ゆっくりと加熱して火を通しています。
肉の中心温度は、55℃前後で加熱されることにより、焼き加減はミディアムレア~ミディアムに仕上がります。
余熱調理の際、冬場でキッチンが寒い場合は、手順10のアルミホイルで包んだあと、さらに布巾やタオルなどで包み、保温効果を高めると良いですね。
ほぼ同じ重量の牛もも肉を使って、一方はアルミホイル、一方はさらに布巾で包み、並行調理し、余熱調理を同じ時間行いましたが、右側の布巾包みが、よりミディアムな仕上がりとなっています。
でも、好みかもしれませんね。右側の布巾包みは、ちょっとメトミオクロモーゲン化してるやん、私はイマイチかなぁ……、などと思うのです。
何を言ってるのかさっぱりわからないと思いますので、順を追ってご説明します。
食肉の赤色
牛肉は、白身が脂肪分、赤身が筋肉ですが、その筋肉中の酸素の貯蔵・運搬の役割を担っているのが、水溶性たんぱく質のミオグロビンという成分です。
ミオグロビンは、赤色色素たんぱく質のひとつです。鉄イオンが含まれています。
生の肉の赤色は、主に、このミオグロビンが主体です。
ミオグロビンの含有量が多い食肉は、赤色が濃いです。たとえば豚肉や鶏肉は薄いピンク色で、牛肉は濃い赤色です。ちなみに、カツオの赤黒さや、マグロの赤色も、主体はミオグロビンです。
新鮮な食肉の色はミオグロビン主体なのですが、そもそもミオグロビンは暗い赤色をしています。これが、空気に触れて、鉄イオンが空気中の酸素と結合する=酸化することにより、オキシミオグロビンという鮮やかな紅色に変化します。
そして、もっと長い時間、空気に触れると、さらに酸化して、メトミオグロビンという暗い褐色になります。ローストビーフは必要な分だけ切り分けて、残りはかたまりのまま、断面はラップなどで覆って保存するのが良いのは、そのためです。
ローストビーフの色の変化 | |
---|---|
ローストビーフを切った直後 | 「ミオグロビン」=よく言えば薄いピンク色、全体的に暗い赤色 |
↓↓ | |
切って数分後 | 断面が空気に触れて酸化し「オキシミオグロビン」に変化=鮮やかな紅色 |
↓↓ | |
さらに放置すると | 断面がさらに酸化し「メトミオグロビン」に変化=暗い褐色 |
市販のハムやソーセージには、亜硝酸塩類を添加することによって、このミオグロビンをあらかじめ化学反応(ニトロソ化)させ、色素を固定し加熱や酸化によって褐色になるのを防いでいます。このため、塩漬けの時点で桃色→加熱しても色が変わらず桃色に仕上がって製品化される、というわけです。
ところで、「焼肉」や、「すき焼き」などは、仕上がりは灰褐色ですね。これは、薄切りの牛肉に対して、短時間で加熱する調理法のためです。
この、加熱した際の変化は、メトミオクロモーゲンという状態で、色は灰褐色です。
ローストビーフの肉汁
牛肉を加熱すると、50℃前後で、牛肉に含まれるたんぱく質が変性して固まります。卵と同じですね。
牛肉の場合は、たんぱく質が変性すると、ざっくりと次のようなことが起こります。
- 弾力性を増して硬くなり、歯切れの良い食感になります。
- 保持していた水分が分離されます。そのとき水分と共存するうまみ成分、エキス分、脂肪も溶け出します。これらは「肉汁」と呼ばれています。
この「加熱」を、短時間で行うほど、牛肉を構成しているたんぱく質が変性し、収縮して凝固します。
つまり、牛肉は調理の際の温度変化が急激になるほど、牛肉は縮み、ぎゅっと圧迫されて固まり、水分=肉汁が逃げやすい状態となります。
牛肉の温度が低いままローストビーフ調理を開始すると、肉汁がたくさん出てしまい、余熱調理後に牛肉を落ち着かせても、行き場を失うくらいのあふれる肉汁が、ローストビーフをカットした際にドバー→先述の色変化で「血?生焼け??」ということになります。
牛肉は、室温20度前後の場合、調理開始の2~3時間前ほど前に冷蔵庫から出して、肉の芯まで温度を常温に戻しておきましょう。冬場でキッチンが寒く10度以下の場合は、20度以上の暖かい部屋に置いて戻すことをおすすめします。もし、1kg以上のかたまり肉を使われる場合は、前日から出しておくと良いでしょう。
そして、先述の灰褐色の仕上がり、メトミオクロモーゲンは、70℃前後が変性の温度タイミングとなります。
私のご紹介しているレシピは、表面を焼いた後は、ソースで煮込み、そのあと余熱調理とすることで、70℃以下を保持するようにしています。こうすることにより、きちんと火が通り、色の変化や肉汁のこぼれを最小限にして、実際にお口に含んだ時に、肉汁があふれてジューシーな食感を味わうことが出来るようにしています。
※参考文献:
食肉の栄養知識
公益財団法人日本食肉消費総合センター
教えて!食肉の流通・加工(pdf)
作り置きのコツ・ポイント
- 牛肉は、調理開始の2~3時間前ほど前に冷蔵庫から出して、常温に置いてから調理しましょう。冷たいままですと、中まで火が通りません。
- 牛肉に、塩とこしょうを、全体的にまんべんなく、よくすりこみましょう。こしょうはたっぷりめですが、臭みが消えますよ。
- 牛肉を焼いている間は、なるべく動かさないようにしましょう。フライパンにくっついたり、中までうまく火が通らなかったりします。
- 牛肉を焼いてからアルミホイルに包んだら、30分以上そのまま置きましょう。余熱調理で、肉汁が全体に周り、美味しく仕上がります。
- 保存容器は、充分に消毒してから使用しましょう。
アレンジのヒント
- ここからいくつかアレンジを書きますが、私は、クレソンと一緒にいただくのが一番好きです。クレソンって一見、飾りのようですが、ぜひ、ローストビーフと一緒にお口に含んでくださいませ。素晴らしいマリアージュです。何倍も何十倍も何百倍も美味しさが引き立ちます!
- あとは、グリーンリーフやベビーリーフなどをたっぷり敷いた上にどーんと盛り付け、オニオンスライスを乗せたりして、ソースをかけ、サラダのように、野菜と一緒にいただくのが好きです。もちろん、先述のようにクレソンがあると、さらに美味しさが増します。
- サンドイッチにもどうぞ。サンドイッチ用のパン、もしくは薄切りの全粒粉パンやバンズなど、やわらかめのパンに、ローストビーフとクレソンを、挟むのはもちろん、包んで、くるっと巻くと良いです。マスタードも良く合いますよ。
- 贅沢な丼も出来ます。あつあつの白いご飯にソースもしくはだししょうゆをかけ、ローストビーフをガンガン乗っけて、クレソンもしくは、玉ねぎの薄切りか白髪ねぎ、そしてお好みでわさびを少しあしらってくださいませ。カロリーは無視で。
- 私は酒飲みなので苦手ですが、すし飯と合うそうです(@うちの子)。手巻き寿司の具にしたり、小さく握ったすし飯に乗せ、わさびを乗せると、たまらなく美味しいそうです。手巻き寿司をやった際、冷蔵庫から出してきて、うちの子が悶絶していました。
- 細かく切って、レタスと共に炒飯の具に使うと、とんでもなく美味しいです。とても贅沢ですが、どうにも余った際にどうぞ。
おすすめ食材、ツール
ソース、ドレッシングなどの保存は、WECK(ウェック)の、TULIP SHAPEという型を使っています。
東急ハンズで見つけて、かわいいから1つ衝動買いしたという、まぁかなり私らしくない出会いですが、かなり気に入って、今では3つ持っています。
広口で、消毒しやすく、別売りのパッキンを付ければ、さらに長期保存が可能ですので、すっかり愛用しています。
フタは木製やプラスチックもあり、とてもおしゃれなんですが、まぁきりがないので、手は出していません。今のところは。
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